医務室からのお知らせ
フーキ

 医務室には受付表と言うのが置いてあります。
 これは、日付、名前、利用目的を自己申告で書いてもらうものです。
 強制ではありませんが、皆さん書いていきます。
 頭痛、腹痛、外傷、カウンセリングなどを利用目的と書きます。
 時々、その欄に『その他』と書く人がいます。
 そんな一例です。

 医務室早朝

「四〇・二度。………これは誰がなんと言うと休んでください。ドクターストップです。入院です。注射です。点滴です」
 医務室の朝は早いです。早いと言うか、二十四時間体制なので休みはないのですが、便宜上、夜勤である遅番と朝から働く早番が入れ替わる時間を『朝』と呼びます。この時間が他の部署と比べると早いほうなのです。
「………ちゅ、注射はちょっと」
 そして本日早番の八神シャマルさん。彼女は遅番の人から「いつもの人が仮眠している」と引継ぎを受けていました。
 仮眠と言うことは、起きれば仕事を始めるということです。人間、起きてすぐさま仕事なんて体に悪いです。
 そして仮眠している「いつもの人」=「ユーノ・スクライア」は、寝てても仕事しているような人なのです。
「もうすぐハタチになる男性が何を言っているんですが。クロノ提督に教えちゃいますよ?最近、『フェレットだとマンネリか…』なんてアコース査察官としゃべっていましたから」
 シャマルさんは「これから帰って寝る!」と言う遅番の人を見送ってから、ベッドで仮眠している人を結界で囲いました。封鎖結界で。
 そうすると何故か寝ていた人は目を覚まします。放浪の民で育った彼は、外界の変化に敏感です。『寝ていても周りのことは知覚できる』とか言ってます。どこの殺し屋だ、と呆れたのは記憶に新しいです。
「あのエロノめ………」
 そんな彼が目を覚ました後、『だるい』と言って体の不調を訴えました。
 自分の額を彼のソレと重ねるととても熱いです。体温計を使えば冒頭の通り。
「とりあえず一本逝っときましょう。ノーマルが角付くくらい違いますから。間違っても赤くなるとか三倍だなんて使い古したことは言いませんよ」
「その誤字ももうだめだと思う………」
 うだうだ言っても何か変わりません。抵抗なぞ到底できないユーノはおとなしく注射を貰います。
「このぷすっていうのが………」
「フォークよりましですよ」
「……あれのせいで『指すもの』が苦手になったんですよ?………なんで無限書庫へ立ち寄った時にフォークなんて持っているんですか……」
 先日、シャマルさんが昼食帰りに無限書庫を覗いたときです。
 受付の司書に『司書長を止めて!』と泣きながら懇願されました。まるで戦場へ行く兵士を恋人が『行かないで!』と引き止める様に。
 見ると、ユーノを中心に本が渦を巻いていた。一〇や二〇じゃ利かない本がそれこそサイクロンのように見えました。誰が言っても止まらないらしく、シャマルさんが旅の扉でユーノの脳天に『ぷすっ』とフォークを指して止まりました。フォークを抜くまでユーノは一切動きませんでした。
「……なんで動かなくなったか未だにわからないんですよ?」
「何の変哲もない食堂のフォークなんだけど……なんでかしらね?」
 ちなみに、シャマルさんは食事でフォークを使うと何故かそれをしばらく持ち歩く癖があります。そして多忙極まる人たちにお茶を入れて回るのです。
「注射打ったからとりあえず寝なさい。頭空っぽにして寝なくちゃだめよ?後、寝てる間に氷嚢呼ぶから絶対起きちゃダメよ」
「は〜い………」
「はい、というわけでお休みなさい。まだ朝だけど」
「……仕事!」
「ズボっと」
「ぶち撒け!?」
 シャマルさん、とっても軽くユーノのリンカーコアを抜き取りました。
 ユーノ程度の魔力ではリンカーコアを抜かれただけでも大事件です。たまらず気絶しました。
「やっぱり仕事いくつもりだったわね……」
 シャマルさんは呆れるしかありません。まだねぼけててよかったです。
 とりあえず無限書庫に司書長がドクターストップである旨を伝えます。そしてクロノ提督にのドクタースットプであることを伝言しておきます。クロノ提督も血も涙もないわけではありませんので気を使ってくれることでしょう。
 次に連絡するのは愛しい我が家族です。末の妹に少し無理を言ってきてもらいます。末の妹も慣れたものです。通信の先で『はやて、ちゃん特殊装備一号を借りていくです』と言っています。
 特殊装備一号はハリセンです。リインはたびたびユーノをハリセンでばっちーんと叩きます。これがヴィータだとアイゼンです。みんな『殺す気で振り回している』と言います。シャマルさんとシグナムさんだけは、じゃれあっているように見えるそうですが。
 武士の情けです。ヴィータには黙っていることにします。
 シャマルさんは受付表を手に取り、昨夜は誰が来ていたかを見ます。
 ユーノ・スクライアの名前は最後にありました。その横の利用目的を見ます。
 ここには外傷・頭痛・腹痛・相談などと大雑把な理由が書かれています。
 ユーノの横には『仮眠』
 シャマルさんはその下、日付を変えてユーノ・スクライアと書きます。
 その横、利用目的に『その他』と書きます。
 カッコしてこう書きます。

「シャマルさんに会いに」

 シャマルさんはリインがくるまで、『にへらぁ』とだらしなく微笑んでいました。

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